極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
「すみ、ません……」
受け取ったハンカチを目元に宛てがい、長谷川さんは頭を下げる。
本社ビルで初めて会ったミーティング時も今日も、気丈な振る舞いできっと強い女性なのだろうと思っていた。
だけど、こんな堰を切ったように涙を流すなんて、一体どうしたのだろう。
「不安て……例の、新婦様側のお父様の出欠のことで?」
「……はい。いろいろ、提案はして……でも、難しいのかなって。私には、無理かもしれない……」
弱音とも聞こえる長谷川さんの細く頼りない声。
依然、涙はポロポロと流れている。
「とりあえず、落ち着きましょう。打ち合わせ、十一時からですよね? お客様がいらっしゃる前に泣いた顔を何とかして……あ、ほら、もしかしたら今日の打ち合わせで、お父様からいい返事がもらえている可能性もあるし!」
長谷川さんがこれ以上泣いてしまわないように、努めて明るく振る舞い励ます。
腕時計を見ると、約束の時間まで三十分をきっていた。
涙を止めて泣き顔を直してくるように、長谷川さんをお手洗いへと見送った。