極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
翌朝――。
多少の時差ボケを熱いシャワーを浴びてスッキリとさせ、普段通り長い髪をアップにまとめ上げる。
キャリーバッグからベロア素材の小さなケースを大切に取り出しその上部を開くと、中には淡く艶を宿したパールネックレスが現れる。
この仕事を始めてから、欠かさず現場に出る時に身に付けている本真珠のネックレス。
昔、事故で亡くなった母が持っていたものだと、澄子叔母さんから手渡された。
幼い頃に両親を亡くした私には、二人の記憶がほとんどない。
昔の写真や両親の遺品は澄子叔母さんが引き取ってくれていて、物心ついた私へと引き渡してくれた。
父が母へと贈ったと聞かされたこのネックレスは、私にとって二人の形見といえる。
「よし……」
姿見の前に立ち、仕事モードに変身した自分に気合いを入れる。
「行ってきます」
毎朝、亡き両親に向けて欠かさない挨拶を呟き、部屋のドアへと向かっていった。