極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
「新郎様のタキシードですが……衣装ケースはまだ別にございますでしょうか?」
流暢な日本語を操って、金髪をアップに束ねた現地の衣装係の女性が尋ねてくる。
彼女は日本から先に届いていた挙式に使用する二人の衣装や小物類を取り出し、チェックをしている最中のようだった。
朝陽が差し込む大きなガラス窓の前には、日本で二人が選んだプリンセスラインの純白のウエディングドレスがトルソーに着せられている。
「何かありましたか?」
訪ねてきたスタッフの手には、新郎が着用する予定の光沢がかったグレーのタキシードのズボンが載っている。
近付いた私を誘導するように衣装類を広げる台に近付くと、彼女は周囲を確認する目配りを見せながら口を開いた。
「新郎様の着用されるタキシードのジャケットなのですが、この中にはないようで。別に持ち込まれる予定でしたか?」