極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


靴を脱いで上がった先の扉を、慶太さんが「どうぞ」と開けてくれる。

その先には広いお座敷の席と、奥には外から見えた美しい日本庭園が全面に広がっていた。

畳に一歩踏み込むと、襖を閉めた音と共に背後から抱きすくめられた。


「会えなかった間、変わりはない?」


耳元で聞こえるいつも通り優しい声。

胸の前に回された腕を眼下に、「はい」と小さく頷いた。


「あの、お忙しいのに、毎日、連絡ありがとうございました」


一週間前、一つのベッドで朝を迎えたのに、慶太さんの香りが鼻を掠めるだけで鼓動が加速する。

落ち着くために、手に持つバッグのハンドルを両手で強く握り締めた。


「やっぱり、本物が一番いいな。声だけじゃ物足りない」

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