極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


予想はしていたけれど、顔合わせの席は終始緊迫した空気に包まれた。

始めの挨拶は交わしたものの、互いに言葉を交わすこともなく沈黙が落ちる。

お義母様の声がする時は決まって隣の悠太さんへの言葉で、私たちやこの席には関係のないビジネスに関する事柄だった。

そんな調子のお義母様を、慶太さんの方も特に気にした様子は見せなかった。

時折、私や澄子叔母さんのことを気に掛けながら、時間をやり過ごしている、そんな感じに見えていた。

私や澄子叔母さんも余計な口は挟まず、目の前の食事について雑談を交わす程度。


これが結婚を前にした両家の会食なのだろうか。

そんなことをひしひしと感じていた時、お義母様がスマホを手に「ちょっと失礼」と席を立った。


「ごめんなさい、急用が入ってしまって、これで失礼させていただきますわ」


部屋へと戻ってきたお義母様は、一方的にそう断りを入れると、悠太さんに声を掛けてあっという間に部屋から出ていってしまう。

その様子に、慶太さんは「見送ってきます」と私たちに言い残し、お義母様の後を追っていった。

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