極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


「何も、されなかった?」


私を腕に抱き締めた慶太さんは耳元へと近付き、さっき聞いた声が嘘だと思ってしまうほど穏やかな声で問い掛ける。

その様子に内心ホッとして、「大丈夫です」と返事をした。


「ごめん……もっと早く見つけられれば、あんな嫌な思いさせなくて済んだのに」

「いえ、大丈夫ですから。でも、どうして……?」

「ああ、さっき、下で神原さんがのどかを見かけたって教えてくれて。悠太と一緒だったと言うから、まさかって」


慶太さんの話に「そうでしたか……」と答えながら、悠太さんの不可解な笑みが脳裏にフラッシュバックする。


『どうしてあなたに、兄さんが結婚を迫ったのか……知りたいですか?』

『でも、それを知ったら……あなたは結婚をしたくなくなると思います』


ずっとどこかに小骨が刺さっていたような、慶太さんとの結婚話。

私の前に突如現れたことにも、明確な理由もなく結婚を迫られたことにも、本当は私の知らない何かがあって起こったことなのかもしれない。

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