極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
両親を亡くしたことで、不自由や何か惨めな思いをしたことはなかった。
澄子叔母さんには金銭的にも苦労を掛けてきたと思っていたけれど、慶太さんのお父様から経済的支援を受けていたのだ。
「父が起こした事故で、のどかの両親が亡くなったことや、支援をさせてもらっていることを聞かされたのは、父が社長を退任した頃だった……自分が身体を壊して、動けなくなるのを恐れて、俺にその後のことを託したんだ」
「じゃあ……私と、結婚するというのは――」
「そう思われたくなくて、勘違いされたくなくて、この話はしたくなかった」
お父様の罪を償うような形で、私との結婚を決めたのですか?
私がそう口にするのをわかったかのように、慶太さんは言葉を遮った。
そっと見上げた慶太さんは、神妙な面持ちでドレスのマネキンを見つめている。
「のどかを知ったのは、間違いなく父が起こした事故がきっかけだった。だけど、君に落ちたと言ったあの言葉に決して嘘偽りはない」
胸が、苦しい。
何か固くて重いものに押し付けられているように、圧迫感が息をつまらせる。
黙り込む私の頬へと、慶太さんの温かな指が触れた。