極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


「大丈夫だよ。必ず来てくださる」

「うん……。でもまぁ、明日、顔を見るまで安心できないけどね」


へへっと笑う桃ちゃんは、キラキラとした生き生きした顔を見せている。

初めて話したあの日、不安で泣いた人とは思えない頼もしい表情だ。


挙式前日は、プランナー自身も万全の態勢で当日を迎えられるよう、夕方には職場を退社して翌日に備えるのがこの業界の常識。

午後六時前までには全てのチェックを終え、早々に式場を後にする。

明日は頑張ろうと桃ちゃんと気合いを入れ、一足早く式場店舗を一人出て行った。


六月に入り、ここ最近、梅雨入り間近だというニュースを耳にするけど、明日は幸い晴れ予報。

ジューンブライド……六月の花嫁は幸せになれるという言い伝えがある。

元々は欧米の気候や、ローマ神話の女神説などからの言い伝えだけれど、いつしか日本でも六月の挙式はロマンティックだと人気となった。

実際は、日本の六月は梅雨真っ只中で、挙式披露宴には向かない湿気と蒸し暑さに見舞われる。

昔は挙式を行うには不人気の時期であったけど、そんな状況に困った婚礼事業関係者が宣伝として広めたジューンブライドは、要は企業戦略であった。

今では予約が取りずらい時期の一つになっているから驚きだ。

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