極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~
一歩、また一歩と近付くたび動悸がしてくる。
胸の前で拳を握り、トントンと自分を落ち着かせるように数度叩く。
ゆっくり息を吐き出し、入るだけたっぷり空気を吸い込んだ。
「慶太さん、待って――」
個室の並ぶ通路へと突入した時だった。
奥からそんな声が聞こえてビクッと足を止める。
前方の個室の扉から慶太さんが足早に出てくると、そのすぐあとをお義母様が追い掛けるように飛び出してきた。
「あなたはいつもそうだ。俺の意思は関係ない」
心の叫びのような慶太さんのその言葉に、ドクっと心臓が大きく震える。
お義母様にそう吐き捨てた慶太さんが、その先で立ち尽くす私の姿に気が付いた。