極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


「でも、傘下にっていう話は……」

「うん……それも、散々考えたわ。のどかと同じように、この会社も私の娘のようなものだから、本当は手放したくない。だから、やっぱりお断りする」


澄子叔母さんはもう全てを決めたように、はっきりきっぱりとそう言い切った。

でも、私の気持ちはすっきりと晴れ渡らない。

結婚も、傘下に入ることもお断りする。
そうなれば、全て今まで通りに変わらず過ごせるのだろうか……?

見つめた澄子叔母さんは、私に目を向けず箸を進める。

その顔に、押し寄せる不安を振り払うような笑みを浮かべた。


「人の手に渡るくらいなら、自分で幕引きするわ」

「え……じゃあ、傘下に入らなかったらうちは――」

「大丈夫よ、二人で生活していけるくらいは問題ないし、私がいなくなっても、あなたが困らないくらい残してあげられるものはあるの。スタッフのみんなには、新しい職場を探してもらわなくてはいけないけど、うちの人たちはみんな優秀だから、園咲さんに掛け合ってもいいかなって思ってる」

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