極甘ウエディング~ようこそ俺の花嫁さん~


六十代半ばくらいと思われる男性だった。

髪は黒く、入院している身といえ、きっちりオールバックに整えられている。

しかし、頬はこけ、健康とは言えない顔付きだ。

だけど、その顔には見覚えがある。


「体調はどうですか」


私の斜め前に立った園咲さんが声を掛ける。

すると男性は穏やかに笑みを浮かべ、「変わらずだよ」と答えた。


「こちら、話していた柏のどかさんです」


紹介され、すかさず頭を下げる。

振り向いた園咲さんは、「私の父、園咲孝太郎です」と私に告げた。


「初めまして、柏のどかと申します」


自分の口からも名乗りながら、見覚えのあることに納得した。

Primary Stageの社長として、メディアか何かで彼を見た記憶があったのだ。

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