君の心の味

「今日転校生くるらしいぜ。」
「マジかよ、可愛いかなぁ。」
「え?転校生?うわーイケメンだといいなぁ…」
「どうする?ハゲ眼鏡だったら」
「それはヤバいでしょ」
転校生が来る時のお決まり。可愛い子かイケメンかの謎の対決。まぁ僕はその答えを知っているけれど。転校生は女の子、目を引くほどの美人ではないが、誰もが可愛いと思うであろう人物。
「席についてー、HR始めるよー」
先生の一言でHRが始まる。簡単かつ適当な出席をとったあと、マンガの様な展開で彼女が教室に入ってくる。
「初めまして。貝原葵海です!あ、月影君!」
と教壇から手を振る彼女。一斉に僕に皆の視線が集まる。

もう本当に勘弁してくれ…

しかし彼女は驚くほど空気を読まず、終始笑顔を浮かべながら先生に座席まで促される。
名前の順で席はそこそこ離れているがあまり遠くもなく近くもないという距離の席に彼女は座った。

「おい、月影。転校生と知り合いなのかよ。」
「…近所ってだけです。」
前の座席の千鳥君に話しかけられる。未だに僕は皆と話す時敬語が抜けず、呼ぶ時も君付けさん付けだ。そんなに馴れ馴れしく高校のクラスメイトとする必要なんてないだろう。

僕はクラスで所謂孤立した存在だった。

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