私に光を〜あなたを信じるために〜
変わらない日
私は星野夏織、中学一年生だ。

実は最近ぼーっとすることが多い。自分でも何を考えてぼーっとしているのかはわからない。勉強のしすぎとか…私に関してそんなことはないか。そもそも勉強とかテスト前くらいしかしない。テスト前もほんの少しだけだけど。

「夏織ーーーっ」
私の目が見開いた。
「ようやく脳内会議から戻ってきたか」
そういえば、華奈と恋バナしてるんだった。

華奈は、中学校に入ると同時にこっちに引っ越してきた。家が近いから一緒に登下校している。そして、下校の時は恋バナをするのが日課のようなものになっていた。とは言っても私はほとんど恋のお話なんてしない。つまり、聞くだけなんだ。

「脳内会議なんてしてないよ」
私はまたぼーっとしそうになったからそう言って華奈の話に集中することにした。
「最近さ、夏織よくぼーっとするよね」
「まあね」
詳しく聞かれても答えられないからこの一言で終わらせた。
「あ。そういえば、恋バナの途中だった」
私は話が変わったことになんだかほっとした。
「やっぱり入学当時だけで見ちゃだめなんだね。性格がいいのはそのときだったとかすごい悲しいんだけど」
「ほんとにね。でも、いい性格が変わってない人もいるから、それはそれでどんまい」

一応私も中学校入学当時だけで見て、好きになってしまったことがある。それだけで手紙に「好きです」なんて書いてあげちゃって。ああ、あれは一生の後悔だな。でも、多分告白しなかったらずっとその人を好きなままだったのかもしれないと思うとよかったなって思ってしまう。そんな自分が憎い。

それからだろうか。いや、本当はもっと前からだと思う。私は本当の好きな人ができなくなった。きっと人なんて誰かが手を差し伸べれば、それにつかまって自分の味方を作ってしまうのだから。人は信じにくい。いつ裏切られるのかと思うと怖くなる。だから、私は誰のことも信じない。

こんないい天気の中、ゆっくりと歩いてようやくついた華奈の家はいつ見ても大きくてすごく綺麗な一軒家で表札には小林と書いてある。なんだか華奈の家なんだなとふと感じた。
「じゃあね」
私は手を振って、走って帰った。華奈の家に比べて、私の家はそんなに大きくなくて綺麗でもないアパートだ。いつものように行き来してるからこれが私の家と感じ、現実逃避なんてできないのだ。
「別にいいし」
私はぼそっと呟いて、勢いよくドアを開けた。
「ただいま」
と言ってもこんな時間に親はいないし、もうすぐ弟の駿が小学校から帰ってくるかなという時間だ。私が所属しているバレーボール部は今日は休みで学校が終わってすぐに帰ってきたからな。自分でもこんな早く帰ってくるとは思わなかった。
せっかくの夏だし、ちょっと走ってこよ。
また勢いよくドアを開けた。
タッタッタッタッタッ・・・
同じペースでただただ走り続ける。今日の夕飯は何だろう、今日はオムライスがいいなとか平凡な考えをしながら。
何分くらい走っただろうか。いつの間にか辺りが暗くなっていた。息切れが半端なく、今にも倒れそうだ。でも、この快感が心地よい。また今度走ろっと。
家に帰ったら、駿はもう帰っていた。そして、母から私にメールがきていた。
『今日、お父さんもお母さんも残業で帰れなくなったから夕飯、駿と何か作るとかなんとかして食べてね』
父と母はよくわからないけどなんか電話に出て質問に答えたり、悩み事をきいて解決したりする仕事をしているらしい。その仕事で二人が出会い、付き合い、結婚して私と弟が産まれた。
「駿、オムライス作るよ」
私は一人で作るのは大変だから駿を呼んだ。父や母が帰ってこないことはこれまでに何度かあったからもう慣れっこだけど。
適当にフライパンにご飯とかケチャップとかの材料をいれて作ったオムライスは形は変だけど味は結構美味しかった。いつものことだ。形と味が同時にいいことなんて一度もない。でも、これが私と弟の手作り感が出て良い。
ご飯食べて、お風呂入って、歯磨きして、ちょっとだけ本を読んで寝た。
こんな私にとって何も変わらない平凡な日々が続けばいいな。
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