僕は桜に恋をした。
「じゃあ案内!」





「えっと、こっち。」





どこにしようか迷ったけど結局よく行く静かで安いお店にした。





「奏太君はいつこっちきたの?」




「一年前ぐらいから。」





「ならちょうど慣れてきたぐらいだね。」





「うん、宮川は今はなにやってんの?」





「記者。」






「へー、意外。」




「そう?結構天職だと思ってたけど。」





そんなたわいもない話を店に着くまでの間していた。




久しぶりだな。




この光景。





宮川の横顔。




耳をかけた時に見える頬のほくろ。



笑った時に口を手で隠すくせ。



当たり前のこと。










僕が10年間望んでいた当たり前。















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