僕は桜に恋をした。
<1時間前>




『村田先生、ちょっと。』






僕は上司から呼ばれた。






今の表情を見た限り、楽しい話ではなさそうだ。






僕が恐る恐る上司に近づくと上司の机の上に何枚かの資料が置いてあった。





『お前がやれ。』





僕は資料と手に取った。







神経膠腫(しんけいこうしゅ)。





簡単に言うと悪性の脳腫瘍。






『グレードは3か4って感じだな。』






神経膠腫の場合、グレード3は5年生存率が25%、グレード4なら7%だ。




グレード3なら何回か経験はある。





でも、グレード4は…





『本当に僕でいいんですか?』





『ああ。』





『…分かりました。』





『今日から入院してる。後から挨拶でも言ってこい。』






僕は一通り仕事を終わらせてから患者の元へ行った。






嘘だと思った。





僕は震える手でさっきもらった資料の次のページを開いた。






そのページのすぐ上には患者の名前が書いてあった。







「 Seika Miyakawa 」





そこには書いてあるはずがない名前が書いてあった。






「なんで…ここに…」





「村田奏太さん。あなたに話さなくてはならないことがあります。」











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