僕は桜に恋をした。
「あの日は二人で映画を見に行ったの。





事件が起きたのは、映画を見た帰りだった。




その時、小さい女の子がいたの。




その女の子を見て、あなたを思い出して圭太はあなたの話を珍しくしてくれたっけ。」




その女の子というのはたぶん宮川のことだろう。




「僕とけっこう年が離れた弟がいるんだって。



弟は奏太って名前で僕の小さい頃にそっくりなのだけど僕とは性格は全然違って、すっごい大人しくて、すっごい無口だって言ってた。」






やっぱり…。






嫌われてたんだな…。





「でも、自慢の弟だって言ってた。」







「…え?」




「僕にとって世界にたった一人の、大切な僕の自慢の弟だって。





どんなことがあっても、




何をしようとも。」





僕は絶対に言いたくない。




聞きたくないことを知らないうちに口に出してしまっていた。




「…もし、




兄ちゃんが一番憎んでると思う人を、



僕が好きになったら、




兄ちゃん、




どう思うと思いますか?」






この質問は絶対しないでおこうと思ってた。





だって、




もし、





僕が思ってる言葉がかえってきたら、









僕はこの想いを消さなければならないから。


























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