僕は桜に恋をした。
僕は全て話し終わってからもずっと泣いていた。




夏美さんは僕が泣き止んだのを見て笑顔で話し始めた。




「ごめんね。




さっき嘘ついちゃった。




圭太がどう思うかってこと。






圭太は、良かったねっていうと思う。





自分がそれだけ想える人ができて良かったねって。




それが圭太の憎んでる人であっても。




だって、あなたは自分よりも大切な人だったんだから。」






「なんで、嘘ついたんですか…?」




「君が、どれだけ彼女を愛しているか、知りたかったの。





実は、中途半端な気持ちなら嘘ついたこと黙っておこうと思ってた…。






だけど、大丈夫そうね。




彼女は、あなたにすごく愛されてるようだから。」





そう言って夏美さんは冷めきったコーヒーを少し飲んだ。





「この世界にいる限り、





誰にだって愛される資格、愛する資格を持っているんだから。





だから、誰に愛したっていいの。」




夏美さんはは急に立ち上がり、自分と僕のコーヒーを手に取った。




「冷めちゃったから入れ直すね…。」



僕は「いいです。」と言おうとしたが夏美さんの悲しい表情を見て何も言えなくなった。




夏美さんはキッチンに行って背を向けながら話し始めた。




「私ね、圭太に好きとか愛してるとか、一度も言ったことなかったの。




そうゆうとこ恥ずかしくて言えなかったし、



あんな別れ方すると思ってなかったから…。




でもね…。




恥ずかしいとか考えないで素直に言えばよかった。





何回も、何回も…。




しつこいって言われるくらい。







でも今、





何百回言ったって、






どんなに大きな声で言ったって、








私の想いは伝わらないんだよね…。





だからさ、




君は後悔しないでね…。




あなたの前には壁があるかもしれない。




だけど、その壁の向こう側には彼女がいるんだから、





何があっても諦めないで、





あなたが彼女を愛している限り、




壁の向こう側に愛する人がいない人もいるんだから。」




夏美さんは少し泣いているようだった。





だか、コーヒーを入れ、振り向いた時の顔は笑顔だった。




















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