これを恋と告うのなら。
*第一章 先輩
* 第一章 先輩
Ⅰ.0学期
ー0学期。
それは3学期でもあり、次の学年に上がるための準備期間だということからそう呼ばれるらしい。
実際、言い方を変えたからといって何か変わるわけでもないし、無論私には関係ない。
今は2月。勉強に勤しむ他クラスの生徒は、この期間を素直に0学期だと捉えるのだろう。
自分で言うのはあれだが、頭が悪いわけではない。ある程度やればできるレベル。
だからといって部活に精を入れているわけじゃないし、特別何かをしているわけでもない。はたから見たらなんの取り柄もない、普通の女子高生である。
「るーわ!」
「ギャッ?!なに・・・って、なんだ未佳か」
「なんだって何!?誰だったらいいんや」
真っ白な肌に生まれつき茶色がかった髪。
小柄で女の子って感じの子。
「未佳のこと考えとったことくらい、もちろん分かっとるで」
・・・話さなければ。
富山未佳。
元気で下ネタが尽きない、見た目だけ見ればモテるのに・・・な残念タイプ。
大阪からの転校生で、中学の頃同じサッカー部にいた友達。私だって、活発な学生生活を送っていたときはあった。
「さっきからボーッてしてるやん」
「うんー・・・暇」
「まぁこの時期することないしなぁ」
私と未佳は部室にいる。
私達は放送部なのだ。弓道や書道などにも惹かれたのだが、結局はこの部活を選んだ。
理由は、楽だったから。顧問はとても緩く、毎日部活をしろとは言わない。
部活をやってると試験に役立つと親に散々言われ、決めたのが放送部だ。
聞いた通りすることもなく、暇を持て余している。
「そいえば」
「なに?」
「瑠羽ってもう大丈夫なん?・・・・・・陸君のこと」
「あぁ・・・」
陸とは、私の元カレのこと。
小学生の頃から仲がいいほうで、高校に入る時に流れで付き合ったような人。
いま考えると、絶対ありえないタイプなのにって後悔している気もする。
「一時はね?そりゃ諦めつかなかったけど、あっちがあんなんだし、イヤでも諦めつくわ」
「どんな?」
「別れて2週間でふっ切れたって・・・早くない?!まじありえない」
「瑠羽のタイプじゃないし、むしろ真逆じゃなかった?」
「やっぱ思う?自分でも思うもん」
どちらかというと、陸は消極的な方で周りも気にしてしまう感じだった。
加えて性格も真逆なため、恋人としての関係性では合わなかったのが別れた原因。
「一時恋愛はいいわぁ」
「じゃあ未佳ちゃんとしちゃう?」
「遠慮」
「るーわー!」
叫びながら私に抱きついてくる未佳。
今は恋愛よりも、友達といれるこの時間が好きだし大切。
男なんていなくたって、人間生きていけるし!
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