《短編》*さよなら、また明日*


部屋の鍵を開けて、ドアノブに手を回し部屋にはいる。


『ただいま』


「おかえりー!真琴くん!」


明るく無邪気に笑う。


『うん。いい子にしてた?』


そう僕がいうと、拗ねたように頰を膨らまし、上目遣いで睨んでくる。


「あたしは、子供じゃないもん!いい子だもん!」


それが、子供なんだよ。

そう思いつつ、僕は「そうだね」と言う。面倒なので、ということが理由だ。



『ねえ、今日は?』


「んーっと、ハンバーグ!」


『キミ食べれないでしょ。そうじゃなくて、今日はかえるの?』


「むぅ。また、そうやって追い出そうとする〜!あたし、死んでるんだよ?勝手だよ!」


『だとしても、僕には見えてるんで幽霊というのは理由には…』


「…おね、がい…」



はじめてだ。


はじめて、傷ついた顔をした。



『……茅野さん?』



「あたし…あたし…」




涙を浮かべた大きな瞳は、潰れそうなくらいに脆くて…


茅野さんは、出て行ったー。







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