《短編》*さよなら、また明日*


「で?」


「お前はどうしたい」


そう笑顔に話す両親の顔が視界に入った。


….……笑顔がこわい



ガクガクと震える手をなんとか抑える。



『は、はい。き、き来て欲しいです』



ふう、ふう…呼吸が荒くなるのを必死に堪えて話す。



「どうする」


「私はムリよ。あなたがいったら?」


「オレも仕事だ。すまんな、りの」



……あたしは、梨奈だよお父さん。


お父さん…一回もあたしの名前を正しく呼んだことないよね…



そう思っても、口にはできなくて「大丈夫です」と震えた声でなんとか言う。



「行ってくる」

「私も」



両親が、仕事に行くとやっと肩の力が降りる。



『き、今日は殴られなかった…はあ』



嬉しさと恐怖心が出てくる。


こんなこと、ない。だからこそ、こわいんだ。




深呼吸をして、呼吸を整える。

それから、制服を整えてカバンを手にする。



『……あたし…どうして生きてるの』



意味、ないよ。


生きてても殴られたり、刃物で体を傷つけられたり、こんなのあたし…何のために生きてるの?


「生きてれば、いつか幸せはやってくるよ」


いつか、なんていつなのか分からないじゃない。


あたしには、待つ時間なんかない。



あたしは、待てない。
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