《短編》*さよなら、また明日*
包丁を首の根元にあてる。
冷たい金属の感触が少し恐怖心をよぶ。
でも、後戻りはできない。
あたしは……決めたことをやる。
お母さん、あたしね、お母さんにいっぱい殴られたけど、キライにはなれないよ。
だって、あたしを産んだのはお母さんだもん。
いろんなことをされて、いっぱい傷ついた…けど、こんなことを感じることができるっていうことが生きるってことだから。
そのことを感じさせてくれたのが、お母さんだから…
ありがとう。
お父さん、あたしね、お父さんに
「りの」って呼ばれるたびに、すごくショックを受けていたの。
お父さんに名前をつけられたから。
あたし、この名前気に入ってるよ?でも、お父さんは気に入ってなかった?
でもね、お父さんの一生懸命に物事を熟すところを見て、きらいになれなかった。
適当じゃなくて、一生懸命にするってことは、やっぱり格好いいなあって思うもん。
ふたりとも、もういいよ。
ふたりで、生きて。
あたしは、ふたりの邪魔になるくらいなら……生きたくないの。
だから、さよなら。
最後に晴れた空が見えた。