《短編》*さよなら、また明日*


ーーーー。


『…そう、だったんだ』


梨奈の過去は、僕が想像していた以上に過酷で辛い現実だった。

左腕を摩る右腕の制服の袖をめくる。


「あ…っ」


『ねえ、……これって』



痣だらけで、痛々しい右腕。

多分、こんな痣が彼女の身体にいっぱいあるんだ。

そう思ったら、彼女がどうしてこんなにも綺麗な瞳を細くして無邪気に笑うのか。わかった気がした。



「……そうだよ。両親にやられちゃったの」


『そう、だったんだ……ごめん!』


「ーーっ!」



彼女の右腕の手首を引き寄せ、彼女を抱きしめる。


彼女は、こんなにも華奢で小さいのに…。


あぁ…涙が止まらない。

僕が泣けばいいって話じゃないのは、承知してる…だけど、いまはこの子の優しさを思って泣いていたい。



「どうして?…どうして、真琴くんが謝るの…」



小さく僕の胸の中で、震えた声が聞こえた。

辛い、という感情を抑え込んでる声だった。


『いっぱい、泣いて。あんなに、無邪気に笑わないで…』


「……真琴くん」


『泣いて…大きい声で泣け叫ぶくらい…泣いて。それから、笑って?あの無邪気な笑顔を見せて…?』


「……あぁ、ありがど〜〜…」


『クスッ…それは、あとでいいよ?』



いまは、泣いて。赤ちゃんみたいに…
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