桜前線

1.目線





「美月」

少し低い癖のある声が私を呼ぶ。

「和津さん?どうしたんですか」

「これをその辺に置いといて!」

そう言って投げられたのは、洗濯ネットに入った洗剤の香りが微かに残るふわふわのタオルの山・・・。

「いや、私マネージャーじゃないんですけどっ!!ちょっと!!」

「よろしく〜」

ピースサインをして、彼は再び練習に戻った。

ピースサイン=よろしく。
これ畳めってことか?

私、マネージャーじゃないんだけどね。

そう言って、私はタオルを仕方なーく畳み出す。

今日は木曜日…体育館は半分ずつバトミントン部と分かれているから、半分は男子バスケ部と相談の元 曜日で交互に決めることになっている。

と言ってもコートを半分の交代ずつは木曜日だけ。
今このタイムが終われば、女バスの出動だから ウォーミングアップしたいのに・・・。

和津さんは私より一つ歳上の高校のバスケ部の先輩。
優しくて爽やかなルックスでボールを追いかけるいかにも、汗もしたたる良い男。
勉強も学年トップを争うほどの優秀生徒。
もちろん 女子生徒たちにモテモテ。
先生たちまでもひと目置かれている。

秀珠高等学校の2年生。

ちなみに、外部の高校からもモテモテである。


中学生から男子バスケ部のエース。
知る人は知る 結構・・・いやかなりの有名人。
スポーツ推薦で高校に入学後も一躍 有名になることは目に見えている。


私もバスケのスポーツ推薦で入学後、早々にバスケ部に入ってこの人を知った。

いや、私も中学時代は、それなりのバスケ部だったので知らない訳ではない。
が・・・苦手なんですよ!ああいうキラキラモテモテタイプ・・・。

しかも私になぜ雑用を押し付けるっ!?
マシュマロ肌のふんわりボブショートの華奢で可愛いマネージャーさんが居るのに!















< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop