彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました
「願、どうしよう?お父さん、もうお金送ってくれないかもしれない」

そう言って母親は、右手に握っていた白い封筒を僕に手渡した。

白い封筒の裏側を見ると、『神宮英道』と送り主の父親の名前が黒い文字で書かれていた。

「お父さんから?」

僕は封筒から手紙を取り出して、視線を落とした。

《麻由理。すまないが、私と別れてほしい。同じ会社で一緒に働いている女性社員のことを好きになった。私はこの先、この女性と一緒の人生を歩んでいきたい。すまないが、もう別れてほしい》

きれいな文字で書かれた父親からの手紙を読み終えると、僕は頭が真っ白になった。

手紙と一緒に入っていたのは、父親からの離婚届だった。父親はすでに離婚届に半を押しており、あとは母親が押せば離婚が成立する。
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