彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました


「そなた、学校はどうした?」

「ちょっと、寝坊した」

目の前にいる女神様に、僕は軽い口調で答えた。

僕が家を出てからすでに十五分ぐらいが過ぎており、時間は午前九時七分を指していた。
家を出て僕はまっすぐ学校には行かず、銀行でお金を七万円ほど下ろしてから、神社に寄っていた。

「ダメじゃないですか、寝坊したら」

薄く笑いながら、女神様は諭すような口調で言った。

「あんたには、関係ないだろ」

僕は、冷たい声でそう言った。

「まぁ、そうですけど」

そう言って女神は、へらっと笑った。

「で、今日はどんな願いを叶えに来たの?」

女神様は、細い首をわずかに傾けて訊ねた。

「四年間会ってない父親に、家に戻ってきてほしいんだ」

「父親?」

僕の言葉を聞いた女神様が、切れ長の目をパチパチさせた。

「うん。四年前に新しい仕事が決まってから、一度も家に帰ってきてないんだ」

「離婚ってこと?」

女神様は、心配そうな顔で僕に訊いた。
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