彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました
「なんか最近、俺に怒ってない。気のせい?」

尊人が、眉を八の字にして小さな声で訊いた。

「怒ってないよ」

そう言った僕だが、心の中では怒っていた。

「ほら、その言い方。絶対怒ってるでしょ」

尊人は、からかうような口調で言った。

「しつこいぞ!」

僕は、わずかに強い口調で言った。

「ははは、怖いなぁ。でも、つぼみがまだ学校にいられてよかったなぁ」

何気なく口にした尊人の言葉を聞いて、僕の頬がピクリと動いた。

「神様って、ほんとうにいるのかもな」

口元をゆるめて、尊人は静かにそう言った。

「‥‥‥‥」

それを聞いて、僕はもう一度窓の外に視線を移した。

広瀬と神様の存在がいるかいないか話していたときも、空はこんな風に晴れていた。

「それで、今日はなんで遅刻したんだ?」

尊人が、明るい声で僕に訊いた。

「寝坊だよ」

僕は、冷たく言った。

僕が神社に一万円を納めて女神様に頼んでいるから、つぼみの転校を引き伸ばすことができているのに、尊人が彼女となかよくなるのは納得いかなかった。
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