彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました
「うわぁ、マジかよ。全然、入ってないじゃないか」

小銭しか入ってない僕のサイフの中身を見て、尊人は目を丸くして驚いた。

「だから、そう言ったじゃないか」

語気を強めて、僕は尊人からサイフを取り返した。

僕の貯金が0になったとき、彼女の転校を引き伸ばすことができなくなる。そうなると、つぼみとも会えなくなってしまう。

残りの貯金額を頭の中でざっくりと計算すると、六十万ぐらいだった。むだつかいを一円もしなくても、彼女と会えるのはもう二ヶ月しかない。

「なぁ、尊人」

「なんだ?」

「お前、広瀬のことが好きなのか?」

僕は一拍を置いて、静かな声で尊人に訊いた。

「はぁ、お前いきなりなに言ってんの?」

僕がそう訊ねると、尊人は打って変わって慌てた様子になった。

尊人の顔がかすかに赤くなっており、彼もつぼみのことが好きだということが表情に表れていた。
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