彼女と一秒でも長く一緒にいたいから、僕は全て神様に納めました
「尊人‥‥‥‥」

僕は怪訝そうな表情で、尊人をにらんだ。

「なんだよ、その目は。俺が、つぼみのことを『好き』って言ったらどうなんだよ?お前に関係あんのかよ?」

尊人もやはりつぼみのことが好きなのか、彼は早口でまくし立てた。

彼も僕と一緒で、つぼみが好きだったことに二人の間に初めて亀裂が生まれたような気がした。

「俺は、つぼみが好きだ。そのことが、願になんか関係あるのか?」

開き直ったのか、尊人はあっさりと自分の想いを僕に伝えた。

尊人の口から出た、『好き』という二文字の短い言葉を聞いて、僕と尊人の間に入っていた小さな亀裂がさらに深くなったような気がした。

「‥‥‥‥好きになんなよ」

「はぁ?」

僕のボソリと呟いた声が聞き取れなかったのか、尊人は口から呆けた声を漏らした。

「僕のおかげて広瀬と会えているのに、お前が広瀬のことを好きになるなよ」

僕は、声を荒げた。

僕が神社に一万円を納めて女神様に頼んでいるから、つぼみの転校を引き伸ばすことができているのに、尊人が彼女と仲良くなるのは許せなかった。
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