『、、、泣いただろ?』〜幼馴染の涙の理由
一方、美鈴は1人庶務課に戻り自分の椅子に深く腰掛けた。
「いお兄は、本当たち悪いなぁ〜、、、。」
ため息を小さく吐いた。
この神崎ホールディングス 代表取締役 社長
神崎 伊織(かみさき いおり)32歳。
母親譲りの整い過ぎた顔立ちは、怖いくらいに美しい。父親に似て身長も高く、普段愛想がない分恐れられている。
2人は二軒隣で、1つ違いではあるが両親が忙しい伊織はよく、美鈴の家に預けられた。
兄弟が居ない美鈴にとって伊織は、まさに大事な兄弟だ。
代々続く大手の企業である神崎ホールディングスは、彼の父親の代でまた一気に業績を上げた。長男である伊織が30を迎えたと同時に、前社長はその座をあっさりと退いた。
なんでも伊織の母親の詩織とゆっくり過ごしたいとか、そういう理由だったと思う。