幸せを探して
私は頭を鈍器で殴られたような気がした。


隼人君は、高校に行けていないことだけでも辛いのに、私の為に嘘をついてくれていたんだ…。


私がこれ以上、隼人君の事を心配しないように。


隼人君の優しさに、今気が付いた。


その後は、ぼうっとしながら会話をしていたからなのか、愛来の話はちっとも耳に入って来なかった。


けれど確か、今日はチアダンス部があるから一緒に帰れないといった内容だったと思う。



帰りの学活がいつの間にか終わり、掃除も終了すると、1人、また1人と部活へ行く為、帰る為に教室から消えて行った。


とうとう、教室に残っているのは私1人だけとなった。


「早く帰りなさい」


と加藤先生が出て行った後、私は1人であるものを探し始めた。


「この辺にないかな…」


探している物は私の消しゴム。


掃除の後、筆箱をしまおうとしてうっかり消しゴムを落としてしまったのだ。


あの消しゴムは、確か美花とお揃いで買ったような記憶がある。


中学の入学式の後、2人で文房具屋へ行って買ったはずだ。


どこにも売っていそうな定番の消しゴムの2個セットを、2つ。


(2個セットだったから、残ったもう1個の方を使えばいいかな…)
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