幸せを探して
先生の呼び掛けとほぼ同じタイミングで、斎藤君が


「宜しくお願いします!」


と頭を下げる。


加藤先生に言われて斎藤君をよくよく見てみると、確かに日本人離れしたハーフの顔をしている。


肌は白く、キャラメル色の髪、薄茶色の瞳が特徴だ。


私を除く女子の黄色い声が飛び交う中、斎藤君は席を指定されて席についた。


(お母さんが朝言ってた、引っ越してきた人かな…)


そんなことをぼんやりと考えながら、私は斎藤君を見ていた。



すると、斎藤君と目が合った。


斎藤君はすぐにほかの方向を向いたものの、私は体中に電流が走った時のような衝撃を受けた。


(この人は、私と同じ…)


何が同じかは分からない。


直感的にそう感じた。



けれど私は、それ以上深く考えなかった。



1時間目が始まっても、皆は全く授業に興味を示さなかった。


ノートをとっているのは、見渡す限り私を含めて5人程しかいない。


ほかの人達は皆、転入生の斎藤君の方に興味を示している。


斎藤君のネイティブな英語を聞いて騒ぎ立てたり。


アメリカでの暮らしはどうだったかと質問攻めにしたり。


習い事は何をしているかを聞いたり。


好きなタイプは?と聞いたり。


挙げ句の果てにはかっこいいと褒め称えたり……。
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