幸せを探して
それから少し時間が経ち、時間は11:00。


3時間目の国語が始まって、少しした頃。


「あ、雪だ!」


急に、ペン回しをしながら窓を眺めていた愛来が立ち上がり、叫んだ。


その声につられるように、何人かが立ち上がって中途半端に閉まっているカーテンを勢いよく開ける。


その他の人も一斉に窓の方を向いた。


「綺麗だね…」


「真っ白だ!」


(ニュースキャスターは、昼過ぎからだと言っていたのに…)


絶対に見たくなかったのに。


それなのに。


とうとう、私もクラスメイトの興奮する声に導かれ、左側を向いた。



その雪は、本当に綺麗だった。


見ない方がもったいないくらい。


校庭一面、雪色に染まっている。


まるで吸い込まれそうな真っ白な雪。


ここからくっきりと見えていた遠くの山並みは、雪のベールに隠されてほとんど見えない。


木々は新たな色を取り戻し、その細い枝には重い雪が降りかかる。


太陽は厚い雲に阻まれているはずなのに、その空はほんの少し明るく見えた。


もっと、ずっと見ていたかった。


本当は、雪が好きなのに。


それなのに、どうしても1年前のあの光景と重なってしまう。


真っ白の雪が、真っ赤に染まったあの瞬間と。


私の隣に横たわった、あの人の事を。


助けられなかった、あの人の事を。
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