幸せを探して
私は、苦しさに耐え切れずに下を向いた。



しばらくして授業が再開したけれど、私の気分の悪さは治まることを知らずに、どんどん酷くなっていく。


(もう無理…)


私は我慢出来ずに立ち上がり、先生の許可をもらって保健室へと直行した。



「失礼します…」


保健室のドアを開けて中に入ると、回転式の椅子に座った中村先生がこちらを向いた。


「あら、川本さん。今日雪が降ってもしかしたらと思っていたけれど、やはり駄目だったのね」


中村先生の艶やかな黒い髪が揺れる。


着物を着た姿が絵になりそうな人だ。


「はい…」


私は俯き、そばのソファに座った。


自分で体調を崩すのを知っているはずなのに、雪を見てしまうなんて。


後悔しか残っていない。


「さて、今日はどうしたの?」


中村先生は立ち上がり、ソファに近づきながら質問を投げかける。


私の症状が分かっているはずなのに、わざわざ質問をするのは保健室の暗黙のルール。


「雪を見てから、気持ち悪くて、頭痛がします」


私は、去年の冬の時期と今年の冬の時期、頻繁に保健室へ行くので、すっかり中村先生とも仲良くなった。


それが良い事なのか、悪い事なのか分からないが。



私は体温計を受け取ると、脇に差し込んだ。


熱は無いと分かっているけれど。
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