幸せを探して
「私は、笑顔になれたなら、その人は幸せって事だと思う」


「…」


ん?という顔をする私を見て、美花は毛布に包まりながら説明する。


「美空は、私が死んでから笑わなくなったでしょ?…笑えなくなったって言った方が良いのかな…」


美花は自問自答してから話を戻す。


「とにかく、笑わなくなったでしょ。それって、幸せじゃなかったんだと思うんだ」


私は頷く。


あの頃は、幸せが何か分からなかった事と同じ様に、幸せだと思っていなかった。


いや、思えなかった。


美花が居ない今、幸せにはなれない、なってはいけないと思っていたから。



けれど昨日の放課後、私は……。


「笑った…」


美花は優しい頬笑みを浮かべて頷く。


「うん。だから美空は、今幸せなんだよ。悩みを打ち明けられたし、他の人の悩みも聞く事が出来た。前みたいに笑えるって事は、幸せって事なんだよ」


美花の言葉は、私の中にすとんと落ちる。


まるで、ずっと前からその言葉を待ち焦がれていたように。


「ちなみに、私の幸せは、美空の幸せだよ」


美花が不意にそんな事を言う。


「え?」


私は驚いて聞き返した。
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