幸せを探して
私の事を思い出して、美空は嫌という程苦しんだ。


自分を責め続け、目を真っ赤に腫らしてまで泣き続ける姿を見て、私も息苦しくなった。


何とかして、美空の苦しみを和らげてあげたかった。


けれど、既に死んでしまった私は、声をかけて慰めることも出来なくて。


ただただ、隣で美空を見つめる事しか出来なかった。



けれど、そんな美空を変えてくれた人達がいる。


愛来や、陸人や、翔平君。


限られた人達の中で、美空は自らの苦しみを告白し、笑うことが出来た。


“笑えたら、幸せ”


美空は今、幸せなのだ。


ようやく、双子の片割れを思い出して苦しまなくても、生活出来る日がやってきた。


過去を振り返り、立ち止まったあの頃の美空はもういない。



けれどそんな時に、死んだはずの私が現れたら、美空はどう思うだろう。


喜び、嬉しがるかもしれない。


けれど、その代償は大きいのだ。


きっと、また前の美空に逆戻りしてしまう。


そんな事は、美空のことを一番よく知っている私が、双子の妹として、絶対に避けたかった。



「美空、夢だって思ってくれてるよね…」


私は、ニゲラの花束をそっと触りながら呟く。
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