幸せを探して
一通の手紙に、これ程までに神経を使った事はないのではないか。


それ程、私は集中していた。


あっという間に1ページが文字でうまる。


2ページ目に移り、すぐに数行がうまった。


『だから、美空。私の事は忘れて下さい』


そこまで書き、私の手が止まった。


視界がぼやけ、文字がきちんと見えないのだ。


(あれ…?)


目をこすると、手が濡れた。


「えっ…?」


自分でも、何が起きているのかよく理解ができない。



ポタリ、ポタリ。


机に、そしてノートに。


水滴が落ちる。


(私、泣いてる…)


そこでようやく気づいた。


何度拭っても、上を向いてみても。


涙は、なかなか止まってくれなかった。


涙がノートの上に落ち、今書いたばかりの茶色い字を滲ませる。


「どうして…?」


目元を押さえながら、私は途中まで書いた手紙を読み返す。


私が泣く理由を作った文が、あるのかもしれない。


『私の事は忘れて下さい』


一番最後の文に目が止まった。


「私の事は、忘れて下さい…」


言葉に出すと、新たに涙が流れる。


そこで、私はようやく気がついた。


本当は、私は忘れてもらいたくない!
< 200 / 248 >

この作品をシェア

pagetop