幸せを探して
『本当は、私もこれが現実だって言いたかった。

1年ぶりに美空に会えたのに、嘘をつきたくなかった。

だけど、もし現実だって分かったら、美空は私をずっとこの世界に居させようとするでしょ?

そうなったら、美空はまた前の美空に逆戻りしちゃう。

せっかく、翔平君達が美空を変えてくれたのに。

笑えるようになった美空を、壊したくなかった。

それだけは、絶対に嫌だったの。

だから、私は嘘をついた。

“これは、夢だよ”

って。

本当にごめんなさい』


そこまで読み、私は思わず


「ああ…」


と感嘆の溜め息を漏らした。


夢の中のはずなのに、何故か違和感を感じたからだ。


美花の手の感触が感じられたり、美花のシャンプーの匂いが分かった。


自分の頭を掻いた時には少しの痛みがあったし、布団にくるまって温かさも感じられた。


本来なら、現実でしかありえないことなのだ。


それに、私が質問をした時の美花の態度もおかしかった。


ぎこちなく返事を返し、あからさまに違う話題に変えようとしていた。


「じゃあ、現実…?」


ようやく、状況が飲み込めてきた。


美花は、本当に私の元に会いに来た。


会いに来てくれた。


(でも、どうやって?)


私は、その疑問の答えとなる日記を読み進めた。
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