幸せを探して
美花の願い通り、また交換日記を書いてもいいかもしれない。


前の様に2人では書けないけれど、その日その日の出来事を綴る事は、楽しい事だと知っているから。


何しろ、1年前まで美花と楽しんで日記を書いていたのだから。



私は茶色のペンを美花の机に置き、また日記を持ってベッドへ移動した。


また、美花からの手紙を読み返す為だ。


亡くなった美花からの手紙。


これが最初で最後の手紙だと認めたくないけれど。


美花がそう言ったのだから、きっと美花はもう、肉体を持ってこちらの世界に来れないのかもしれない。



けれど私の記憶の中では、美花との時間は続いている。


美花との数え切れない思い出がある。


それに、美花が会いに来てくれて、手紙まで残してくれた。


「ありがとう」


そう呟きながら、私は2回目となる、美花からの私宛の手紙を読み始めた。




美花が私の元に会いに来てくれたあの日から、2週間が経過した。


3月に入り、もうあと1週間で修了式。


春休みを間近に控えた私達梅ヶ丘中学校の生徒は、爽快感に溢れていた。



ある日の夜、突然にそれはやってきた。


「ただいまー」


玄関のドアが開いた音がした直後、低い声が家中に響いた。
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