幸せを探して
「お父さんだー!」


あやとりをしていた流美が飛び上がり、チーターのごとく玄関へかけて行った。


「あら、おかえりなさい」


お母さんも笑顔で立ち上がり、お父さんを迎えに行く。


「ただいま!皆元気だったかー?」


私のみがリビングに残され、楽しそうな明るい会話が耳に入ってくる。



あと少しで帰ってくると聞いていたけれど、まさか今日だったなんて。


(課題)


瞬く間に、私の心の中はその単語だけで埋め尽くされる。


課題、課題、課題。


幸せについて美花が教えてくれたから、課題については答えられる。


けれど、出来るだけ答えたくはなかった。


間違っていたら怖いからだ。


(お父さん、忘れていて…!)


そう必死で祈りながら、私は出迎えに向かった。


「おかえりなさい」


私が出て行くと、お父さんは流美を抱き上げた姿のままこちらを向いた。


「おお、美空!…ちょっとな、お土産が…」


お母さんが、ずっと玄関で話していたお父さんをリビングに連れ込む。


流美が椅子に座ったお母さんの膝に乗っかった。


そこでお父さんがしゃがみ込み、意気揚々とキャリーバッグを開け始めた。


私もつられて床に座り込む。


「アメリカ、いい所だったよー。皆優しくてさ」


と、お父さんは自分の思い出に浸りながらある物を取り出した。
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