幸せを探して
「……心から、笑えた時が幸せだと思う…」


美花が教えてくれた、幸せ。


どうか、正解でありますように。


私は恐る恐る顔を上げる。


真正面に、お父さんの顔があった。


先程と違うのは、お父さんが涙を流していた事。


「…」


驚いて隣を見ると、椅子に座っていたお母さんまでもが目を潤ませている。


私と同じく状況を把握していない流美だけが、笑顔であやとりを続けていた。


「え…?」


(何で、泣いてるの?)


そう聞こうと思ったけれど、言葉が出てこなかった。


「…良かった…」


私よりも先に口を開いたのは、お父さん。


「…美花が死んでから、美空が目に見えて変わっていって…凄く、心配だったんだよ…」


お父さんは一言一言、噛みしめるようにそう言った後、突然私を抱きしめた。


「っ!?」


お父さんのたくましい腕が、私を包む。


仕事を頑張り、家族を支え、そして私を元気づけた、その大きな手。


その手が私の背中まで回り、そのままお父さんの胸の近くまで引き寄せられた私は、ある事を思い出す。


私達が幼い頃は、よくこうやってお父さんに抱きしめられていた。


今とは違って、美花も一緒に。
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