幸せを探して
7:45、私は教室のドアを開いて目を疑った。


いつもならそこには1人しかいないはず。


勉強をしている、陸人しか。


それなのに、何故か斎藤君と愛来の姿もあった。


陸人は斎藤君に勉強を教えながら、自分も数年先の問題を解いている。


前のドアから姿を見る事が難しい愛来は、教室の後ろのスペースで、大胆にも開脚をしていた。


「ふーっ…」


大きく息を吐きながら前に倒れる愛来。


ぺったりと床に上半身がついた愛来を見て、彼女の体が柔らかいことを思い知らされる。


「…おはよう…」


3人しかいないというのに、1秒たりとも途切れる事なく続いている会話の中に、私の今にも消えそうな声が混じる。


その瞬間、ぴたりと3人の声が止んだ。


「美空?」


愛来が柔軟な体を折り曲げ、机の隙間から私の姿を確認する。


そして、弾丸のような速さで私の元へ駆け寄ってきた。


「おはよう、美空っ!」


愛来に手を引かれ、私は教室の中に入る。


あの日以来だったからか、何となく気まずかった。


それと同時に、今までとは違う和やかな雰囲気を感じた。


まるで、この3人の中に私は入ってもいいような…。
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