幸せを探して
「私を…産んでくれて……ありがとう…凄く、楽しかった」


美花は微かに笑う。


まるで、もう死ぬ事を覚悟しているかのように。


「美花っ…」


お母さんは泣き崩れた。


「…お父さん…」


美花は、一時帰国していたお父さんに呼び掛ける。


「何だ?」


「あのね…お父さんはいつも仕事で忙しいけど…買ってきてくれるお土産、ほんとに楽しみだったよ……これからも頑張って」


美花は、声を出さずに“スノードーム”と口を動かした。


美花の言うスノードームは、昨日にお父さんからのお土産で貰ったものだった。


美花はスノードームをとても気に入っていたから、感謝を伝えたかったのかもしれない。


「もちろんだよ…」


お父さんも涙を堪えきれず、上を向いて何度も瞬きを繰り返している。



皆、これが美花の最期の言葉になると分かっていた。


美花は、今では言葉を出す度に怪我の痛みと闘っていた。


それでも美花は、必死に言葉を紡ぎ出していった。


私達が悲しまないように。


命ある限り。



「…美空…」


美花は首を動かし、私を捉える。


その瞳の中には、私しか映っていなかった。


「何?美花…」


私は美花の手を握りしめた。
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