幸せを探して
「…俺さ、見た事とか聞いた事って、絶対に忘れないんだ…何か、そういう体質?能力?みたいな感じで…」


「…」


「ギフテッドって言うらしいんだけど…」


(知ってるよ)


「あの日…俺、居たんだ……その、事故現場に」


「へっ…?」


間の抜けた声を出してしまい、私は慌てて口を押さえる。


(何で、居たの?)


(やめて、言わないで)


(私を、これ以上苦しめないで!)


「すぐに離れたんだけど…まさか、あれが川本達だと思ってなくて…」


陸人の話を簡単にまとめると、


陸人はあの日、偶然に事故現場の道を通りかかり、倒れる2人の少女を見た。


その周りには人がわらわらと集まっていた。


陸人は怖くなってすぐに立ち去ったが、あの時の景色が目に焼き付いて離れない。


私達の会話も途切れ途切れに聞こえていたらしい。


「あの時…雪が真っ赤で……」


陸人は話しているのも辛そうだった。


何度も何度も息を整えるその姿は、本当に記憶能力が高い事を思い知らされる。


あの時の光景を、想像したくもないだろう。


私も辛いのだから。


けれど陸人は、何もしなくてもあの日見た出来事が蘇ってくるようだった。
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