幸せを探して
「俺、こんなんだから…全部、覚えてるんだ…隅々まで。…そこに居た人の服装も、髪型も…」


少し間を開け、陸人は続ける。


「…お前達の、姿も……」


私の目からは涙が溢れていた。


「言わないで…誰にも、言わないで…」


鼻の奥がツンとする。


「え…」


「お願い…事故のこと、誰にも言わないで……知られたくないのっ…!」


私は泣きながら懇願した。


「そりゃ、もちろんだよ…ただ、俺は一応川本に言っといたほうがいいと思って…」


私は頷く。


「誰に何を聞かれても、答えないで…」


「…ああ」


陸人はしっかりと頷いた。


涙のベールで陸人がぼやける。


そんな私を見て、陸人は大胆な行動に出た。


私を、窓まで連れて行ったのだ。


窓から見えるのは、積もっている雪と、それに新たに降りかかる雪。


「っ…!?」


私は咄嗟に目を逸らした。


(やめてよ、陸人っ!)


「逸らすな」


陸人には、全てがお見通しだったようだ。


「ちゃんと雪を見ろ」


固く目を瞑る私の顔の向きを、陸人が変える。


「嫌…」


「ほら、見ろよ。…泣いてもいいから。叫んでもいいから」
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