幸せを探して
私はふっと微笑み、答える。


「いちごの味と、チョコの味。甘くて美味しい。…ちゃんと分かるよ」


それを聞いて、隼人君は微笑んだ。


何故そんなことを聞かれたのか、私には分かる。


それは、遡ること1年前。


私が、入院していた頃。



『ねえ、君、美空ちゃんだよね?』



そう言われたのは、私が美花を亡くし、入院していた頃だった。


その頃の私は、精神状態が安定していなかった。


それは、食べ物の味すら分からなくなるほど。


感情も上手く表せなかった。


『…隼人、君…?』


その人は私の親友、愛来の兄。


今から約1年前に事故に遭い、足を怪我して入院していると聞いていた。


(まさか同じ病院だったなんて…)


心の中で驚愕する私をよそに、隼人君は笑いながらポッキーを差し出した。


『ほら、ポッキー。食べよう?』


隼人君が何をしたいのか、分からないけれど。


私は無言でポッキーを受け取り、先をかじる。


『ほら、美味しいでしょ?これ好きなんだよね』


笑ってポッキーをかじる隼人君を、私は見つめていた。


『どうしたの?』


私の様子がおかしいことに気づいた隼人君が尋ねる。


『甘い…?』


『えっ?』


隼人君は怪訝な顔をした。
< 79 / 248 >

この作品をシェア

pagetop