幸せを探して
『甘いって…?』


私の質問にますます怪訝な顔をする隼人君をよそに、私はパニックに陥っていた。


『…甘いって何?どう甘いの?苦味があるの?それとも、とろけるように甘いの?』


隼人君が息をのむ音が聞こえた。


『どう甘いの!?…何も感じないの!!味が分からないのっ!…どんな風な味なの?チョコレートは?先端部分のいちごは?……もう、全部分かんないよ……』


感情が突然爆発した。


ポッキーの味が、全く感じなかった。


ベッドの上で涙を流す私を見て、隼人君は車椅子の上から手を伸ばし、私の頬を流れる涙を拭う。


『大丈夫…大丈夫だよ、美空ちゃん…』


『分かんない…分かんない…』


『大丈夫。大丈夫だから、安心して…』


隼人君の声は、とても温かくて。


涙のベール越しに隼人君を見ると、心なしか、隼人君の目に光るものが見えた気がした。


しばらくして涙が止まった私をまた苦しめたのは、隼人君の一言で。


『あ、雪じゃん』


その声につられるように窓の方を見てしまった私。


『あっ…』


しんしんと降る雪は、私の心を氷で固めていく。


(雪っ!!)


(見たくない、やめてやめて!)


それなのに、何故か目を逸らせなくて。


『嫌だっ!!嫌!!』


隼人君がしまった、という風に口を押さえたけれど、もう遅くて。
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