幸せを探して
「へ?」


私は再び間抜けな声を出してしまう。


「美空ちゃん」


隼人君は、真面目な顔で私の方を向いた。


「何か、隠してるよね。悩んでるよね。それを、言いに来たんでしょ?」


先程とはまた違う威圧。


私はその勢いに押されて、頷くしかなかった。


「どうしたの?話して?」



隼人君は、本当に優しい人だ。


他人の事を1番に考え、行動に移す。


そんな澄んだ瞳で見つめられたら、話すほかないではないか。


それでも、私の喉は最後まで開くのを嫌がる。


「わ、わ、私は…」


何とか喉の奥をこじ開けたせいで、どもってしまう。


それでも、私は話す。


決めたから。


「私、美花が死んじゃってから、雪を見れなくなったんだ」


「知ってるよ」


真面目な声で相槌を打ってくれる隼人君。


「雪を見たら、あの日と重なるの…真っ赤な、雪と…」


どんどん呼吸が浅く、速くなる。


(駄目。速くならないでっ…駄目、駄目!)


私は胸に手を当て、必死で呼吸を整える。


そんな私を見て、隼人君は何を思っているのだろう。


「ショックが大き過ぎて、食べ物の味も分からなくなった…隼人君の大好きな、ポッキーの味も…」


「あれは、地味にショックだったなー」


隼人君が苦笑する。
< 82 / 248 >

この作品をシェア

pagetop