幸せを探して
「愛来が、隼人君はどんなに辛いリハビリも泣かないって言ってて…逆に笑ってて、尊敬してるって…」



しばらく首を傾げていた隼人君だが、不意に、ああ!と手を叩いた。


急に手を叩かれ、私は椅子から飛び上がりそうになる。


隼人君は私に向かって、愛来には言わないであげて、と念を押してから口を開いた。


「確かに、リバビリの時は笑ってたけど、あれはかっこつけてただけっていうか…皆に心配して欲しくなくてさ」


隼人君は頭を掻きながら、照れくさそうに呟く。


「……病室戻って、誰も居ない時は泣いてたよ」



私は驚いて、隼人君を穴の空くほど見つめた。


(隼人君が、泣く…?嘘だ、ありえない!)


「そんな顔しないでよー!意外だったの?いや、本当だからね?」


隼人君は、驚き過ぎて言葉を失う私を見て笑いながらそう言う。


「…隼人君、それ本当?」


まだショックから立ち直れない私を見て、隼人君はツボにはまったのか、笑い続けながら答える。


「…本当っ…だよ…心配、かけたくなかったからっ……」


クックッとお腹を押さえて笑う隼人君を、私は複雑な気持ちで眺めていた。



その時の私の目は、想像以上に冷たかったのだろうか。


隼人君は私の顔を見るなり、笑いの発作に見舞われそうになりながらも真顔を作った。
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