幸せを探して
「ほら、何で雪を怖がるんだよ?」


「怖がってない!」


(やめてやめて、それ以上何も言わないで)


「雪を見たら、いつも保健室に行くのに?」


「やめて…」


(私が壊れてもいいの、斎藤君!?)


「おい…」


「やめて!斎藤君!」


私は叫ぶ。


「それ以上、何も言わないで…お願いだから」


「話せば、楽になるのに…」


斎藤君の呟きは、吐息とともに空へと消えた。


そんな事、私自身がよく分かっている。


この苦しみを、もっと誰かと共有したかった。


一度は愛来にも相談した。


けれど、愛来に負担をかけているかもしれないと思うと、相談が出来なくなった。



「雪じゃないよ…」


私の声は、思っていた以上に掠れていた。


私は胸の苦しさに耐えられず、思わず俯く。


私は、雪を見たから思い出す、あの日の記憶に苦しめられているだけ。


雪を、怖がってなんかいない。


そう、信じたい。



「…そもそも、斎藤君に私の何が分かるの?」


私は目線を上げ、斎藤君の視線を受け止める。


「私が何をしようと、斎藤君には関係ない事だから…」


私の言葉は氷の刃のように、斎藤君の胸を貫く。


「だから、私のテリトリーに入って来ないでよ…どうせ、何も変わらないんだし」
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