幸せを探して
目を見開き、微動だにしない斎藤君を、私は氷よりも冷たい目で見据えた。


「もう、やめよう?…こっちも、困るからさ…」


言いながら、だんだんと涙腺が緩むのを感じた。


唾を飲み、それと同時に涙を引っ込ませる。


金魚のように、口をぱくぱく開けたり閉じたりしながら言葉を発しようとしている斎藤君。


彼を見ると、本当に私の事を心配してくれているんだと分かる。



だけど…!


私はくるりと後ろを向いて家へ向かって駆け出した。


「…ちょっ、おい!」


斎藤君の焦ったような声が聞こえるけれど、私は止まらなかった。


目から、一度は堪えていた涙が溢れ出す。


あれほど自分のことを心配してくれているのに、私は心を開けない。


どれだけ私は臆病なんだろう…。


泣きながら家に辿り着いた私は、玄関先で私を迎えようとしている妹をありったけの力で抱き締めた。


流美はとても驚いているようで。


その手からは持っていたおもちゃがこぼれ落ちる。



どれくらいそのままの姿勢になっていただろう。


「…お姉ちゃん、苦しいよ…?」


その声ではっとした私は、きつく抱き締めていた手を緩める。


「ごめんね、流美…」


流美は、様子がおかしい私を見て首を傾げる。


何があったのかと驚いたように出てきたお母さんの横をすり抜け、私は自分の部屋へと駆け込んだ。
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